オールドムービーのおはなし(天河)

今日から12月だそうですが、それは世間や社会が僕を騙そうとしてるだけであって、
実際にはまだ11月半ばの筈です。
そうだよな!? テンテンくん得意のブラフだよなッ!?
やたら往生際の悪い僕は天河です。
激極のおっさんに代わって帰って参りました。


風邪を引いてダウンする前に「次はオールドムービーの話でも…」と
書いたのを記憶しているんですが、
そもそも僕の好きな映画の話をして、果たして誰がついて来れるのかと言う
非常に初歩的な問題に行き当たりました。


だって、僕がよく観る映画って、
白黒〜カラー黎明期の作品ばっかりなんですよ?
シドニー・ルメットの「十二人の怒れる男」とか、
ハワード・ホークスの「赤い河」とか、
ビリー・ワイルダーの「お熱いのがお好き」とか…
トロイメライ>のスタッフですら
誰も知らないだろう大昔の作品ばかりです。
紛うことなきオールドムービー。
邦画なら「大殺陣 雄呂血」も好きで良く観てます。
太刀筋にドラマがあるんですよ。
戦う姿で追われる男の悲哀を完全に演じきっている。
説明ではなく体現。市川雷蔵の真骨頂です。


こんな具合に、オールドムービーのことを話し始めたら、
そりゃあ一昼夜だって語れる自信はありますけど、
誰が興味を持ってくれるんだって言う葛藤もあるわけですよ。
ウォルター・ブレナンを総天然色で初めて観たときの感動は、
確かに僕個人の中ではとてつもなく大きいのだけど、
それを「あのジィさんがしわくちゃな顔で笑うのが可愛いんだ」と
熱っぽく語ったとしよう。
激極だろうがムツだろうが、誰もが口を開けてポカンとするよ。


でもね、そんな狭い趣味のオールドムービーではありますけど、
温故知新の諺そのままに、新しい発見や気づかされることはとても多いのです。
例えば、「アパートの鍵、貸します」のジャック・レモン
上司の不倫相手の正体を知ってしまい、うちひしがれたレモンのたたずまいは
観ていていたたまれなくなるくらいのペーソスを帯びているのですが、
それがまた白黒映画でしか醸し出せない風情になっているんですよ。
総天然色では、おそらく全く違ったシーンになったんではなかろうかと。
恋破れたジャック・レモンの心情が、寒々しい白黒の画と見事に融合されていました。


白黒映画の持ち味とカラー映画の持ち味を見事に融合させた、
シンドラーのリスト」と言う映画もありました(これは結構新しい映画かな)。
総天然色の強みを演出効果として最大限に引き出したのだと感じられたのも、
白黒映画をたくさん観ていたからだな、と自己分析しています。


水曜どうでしょう」の藤村Pも某番組で言っていました。
「新しいことが全て正解ということではない」と。
確かにオールドムービーは古い。その名の通り、古いです。
でも、古き良き時代に触れ、学ぶことが、
新しいものを映し出す鏡になることもまた事実。僕の経験則でありやす。


懐古主義ではありませんが、白黒映画時代はCGなどに頼れない分、
映像の作り込みや工夫が本当に神がかっています。
シナリオも秀逸なものが多い。
なにより白黒映画には、詩的な情緒がある。


白黒映画の持つ広がりに浸るのも、たまにはいいもんですよ。