原点回帰の「HR」(天河)

日本初の本格的シット・コム「HR」をご存知でしょうか?
(“日本初”は「スチャラカ社員」だと言う説もありますが、
それを言い始めたら、「お江戸でござる」もこの範疇に入るが)
今から八年前にフジテレビで深夜に放送されていたドラマです。


海外では「奥さまは魔女」が有名で、
NHKで放送されていた「フルハウス」を記憶している方も多いかと思います。
余談ながら、NHKは後に「ママさんバレーでつまかえて」と言う
オリジナルシット・コムを製作。
これは半券さんも絶賛していました。


シット・コムとは、シチュエーション・コメディの略称。
収録方法の特徴は、テレビドラマと舞台の中間にあることです。
スタジオに観客を招いて、彼らの笑い声も一緒に収録するコメディと言えば、
未見の人でもイメージがつきやすいかな。
「HR」では更にファーストシーンからラストカットまで
ノンストップで収録すると言う荒技を試みました。


僕も自称ながら喜劇作家の端くれ(実際、舞台劇はコメディばかり書いてました)。
シット・コムは憧れの舞台です。
先日、本棚を整理していたら放送当時のテレビ雑誌が出てきたので、
懐かしさから読みふけってしまったのですが、
前人未踏のチャレンジに燃えるスタッフやキャストの意気込みが伝わってきて、
ドラマの楽しみとは別のところでちょっと心が震えてしまいました。


「ホームページ一つを丸々使って、一つの作品を多角的に表現する」と言う、
前作から路線継承のトロイメライのコンセプトも、
新しいステージへのチャレンジを多分に含んでいます。
前作も企画を立てる段階でこの部分の開発に相当苦労をしたし、悩みもしました。
現在はプランナーチームに激々極々やムツさんが加わり、
苦労をひとりで背負い込むようなことはなくなりましたが、前のときは本当に手探り。
何しろ自分の知る限りで前例がないわけですから、何をすればウケるか、
何が受け手の目を引くかも見えなかった。
先の見えない暗闇をライトも付けずに突っ走っていく感じ。
先も見えなければ
スタートするまでは非常に怖かったのを覚えています。


で、実は前作を立ち上げるに当たって、
この「HR」をお手本にしているところがあったですよ。
正確には「HR」に流れるチャレンジスピリットを目標にしたと言うべきかな。
日本で初の本格的シット・コムを作り上げ、
一つのカルチャーとして根付かせたいと意気込むスタッフの熱意が、
おこがましいのは百も承知でありますが、自分の境遇に重なったんです。
心細くなったとき、何度「HR」のビデオを回し、
何度関連記事の掲載された雑誌を読み返したことか。
その度に大笑いして、元気を貰い、
「へたるな! チャレンジすることに意味があるんだ!」と
立ち上がったものです。


「HR」は今観ても最高に面白いシット・コムです。
なにより画面から作り手の熱意があふれ出している。
そこにあるのは、圧倒的なチャレンジスピリットです。
そして、新しいステージに突き進む勇気を分けて貰える。


前作と<トロイメライ>とを繋ぐ一本の線は、まさにこのチャレンジスピリットだな、と。
そして、僕らが挑戦している「ホームページ一つを丸々使って、
一つの作品を多角的に表現する」と言うスタイルは、
チャレンジスピリットのみがこれを成し遂げられるただ一つの鍵なんだと言うことも
再確認しました。


今日、執筆の前にまた件の雑誌を読もうと思っています。
サイト解説一周年のタイミングで原点回帰できたことは、
きっと大きな財産になるはず。


ちなみに「HR」本編では、第6回「級長選挙」がオススメ。
もうあらゆる意味で神がかってます。日本のコメディの底力を感じられますよ。